Blog

ブラックジャック

手塚治虫の名作「ブラックジャック」に、自分の手術を自らの手で行うというシーンがあります。自分自身でお腹に局所麻酔を施して、鏡を見ながら手術をするというお話です。いやはや、さすが世界一の天才外科医はスゴイですよね。中学生の頃、ブラックジャックが大好きで、自分も将来医学部を目指しているという友人がいたのですが、彼のスゴイところは、ブラックジャック全話を覚えていて私にストーリーをお話ししてくれるのです。
私も手塚治虫の大ファンでしたから、「あ!その話知ってる」なんて良く喋っていました。そして冒頭にでた自分で手術を行う話になると、一段ギアが上がったように話し込まれた記憶があります。彼にも私にも、ブラックジャックの神業的な印象深いシーンだったのでしょうね。
さて、それでは、私たち歯医者は自分の歯の治療をどうやっているのでしょうか。祖父のころは歯科医が少ない時代だったので、自分で歯を抜き、入れ歯を作って調整するなんて強者もいたようです。そうは言っても、鏡を見ながら細かい歯の治療なんて出来るはずもなく、先輩とか友人とか、他の人の手に委ねるしかないのが現実です。
先日、“さくらんぼ鶏の手羽元燻製”という美味しいものを頂いたので、つまみ食いでガブっとかぶりついた時の事です。なんと恐ろしい事 、真ん中の前歯がガリっと欠けてしまったのです。キャー!キャー!キャー! そして緊急治療の開始となりました。小児歯科専門医の由紀先生と、歯科衛生士のはるみさんは、チェアーに寝ている私を囲んで、あーでもないこーでもない・・・と。口を開けて鏡を見ている私は「フガフガフガ!!!(こーやってあーやって!!!)」・・・と。
とてもブラックジャックの高貴な手術とはかけ離れた現実でした。

歯学博士  沼澤 孝典