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金の歯・銀の歯

昔・・・と言っても、私の祖父の時代は、金の歯が流行りでした。
前歯にも金歯を入れるのが主流だったそうです。総入れ歯にも自然観を出すためと言って金歯をはめ込んだりしていたようです。当時は金歯が自然な時代だったのでしょうね。 時代が変われば流行りも遷り、現在では天然歯に近い白い歯を求める方が主流となり、前歯に金を使うことは全く無くなりました。
では、銀の歯はいつ頃から使われているのでしょうか?いわゆる銀歯と呼ばれるモノは1961年から使われ始めたと言われています。私の父が歯科医師になった頃、そして日本に国民皆保険制度が出来た時からです。その多くは金銀パラジウム合金という貴金属です。色は銀色をしておりますが、なんと金が12%も含まれております。他に銀50%、パラジウム20%、銅18%程度で出来ている合金です。金属の性質としては安定しているので変色も少ないのですが、ごくわずかな溶出金属イオンによる金属アレルギーや、ギラギラして審美性に劣るといったデメリットがあります。実はこの金属、ドイツをはじめ多くの国ではすでに使用禁止となっています。先進国と呼ばれる国で多用されているのは日本だけのようです。何故なのかは不明ですが、60年以上もこの金属が主流として使われて続けている現状があります。日本の健康保険制度が、国民の病気に対して最低限の治療を担うことを求めているためかもしれません。
さて、原材料として含まれているパラジウムですが、世界一の産出国はロシアなんです。そのため近頃のウクライナ情勢によって、金属入手にも大きく影響が出てきています。尊い人命が失われている悲惨な現状から一刻も早く脱却し、平和な世の中になることを願うばかりです。

歯学博士  沼澤 孝典