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古今東西

歯にまつわる言い伝えや記述はいろいろあります。
以前もご紹介したと思いますが、古代エジプトのパピルスには歯の予防についての記述が載っており、この頃からすでに歯に対する関心があったことが窺い知れます。また、古代ローマ帝国の貴族たちは、爪楊枝で歯の掃除をしていたという記録があり、バラを粉末にした歯みがきや、鹿の角などを使った薬などで歯のケアをしていたようです。当時の塩はとても高価なものであり、一部の王族しか塩ハミガキを使えなかったことから、いろんな材料で代用したのでしょう。インドでは、お釈迦様が「早起きして木の枝で歯を磨きなさい」と仰ったという伝えがあります。きっと木の枝の繊維をほぐして歯ブラシ代わりに使ったのでしょうね。日本には、仏教の伝来とともに輸入され、平安朝のころには加持祈祷の中の楊枝の儀式というものに発展し、それが民衆への歯みがき奨励に大きな役割を果たしたとされています。
それよりも大昔は・・・、歯の化石からいろんな事実を知ることが出来ます。草食性や肉食性であることはもちろんのこと、どんなものを食べていたかも推測出来ます。たとえば鳥の祖先である始祖鳥は、昆虫や動物の遺骸を食物にしていたことも推定されているそうです。驚くことにティラノサウルスは小さな前肢で歯の掃除をしていたこともわかっています。また肉食性の恐竜が歯ぎしりをしていたことも歯の減り具合で判明しているのだとか。恐竜の歯ぎしり・・・スゴイ音なんでしょうね。
古代エジプト人は、ミイラの歯の化石が極端に摩耗していることから、日常食べていたパンに砂の粒が多く含まれていたことが明らかになりました。 砂入のパンを食べたいとは思いませんが、現代は軟らかい食べ物が多く、歯にとっては良いことなのかどうか・・・
古代から試行錯誤されている口腔ケア。
昔も今も、自分の歯は自分でしっかり守るしかないようです。

歯学博士  沼澤 孝典