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駅そば

山形には、太くて色の濃い田舎蕎麦から細くて白い更科まで、いろんなタイプの蕎麦がありますが、それぞれ違った良さがありどれも美味しいと思います。それとは別物であると考えていますが、私は「立ち喰いそば」の大ファンなのであります。中でも「駅そば」と呼ばれる、駅のホームなどにある立ち喰いそばの、独特の哀愁というか雰囲気がたまらないのです。忙しい日常のほんのわずかな安らぎ、列車の時間を気にしながら熱いそばと格闘する。日本発のファストフードの代表格だと思います。
私が小さい頃は、発泡スチロールの容器で車内に持ち込むことが出来ました。当然のことながら、狭い車内は鰹節ダシの香りが充満するものだから、他の乗客もつられてそばを買う列に並んだものです。今では考えられませんが、新幹線の車内で食べられたらどんなに幸せなことでしょう。このご時世やっぱり迷惑かな。
さて、駅そばの人気ナンバーワンといえば天ぷらそばでありますが、私はちょっとだけ贅沢な「天玉そば」派です。そばの上に乗っけられたかき揚げと卵を、箸を割りながらジッと見つめて、おもむろにエイヤッ!と下のそばを引きずり出してかき揚げたちを下に沈める。いわゆる蒸し風呂状態にするわけですな。それから、上に出ている濁ってないそばをズルズルと3口ほど食べたのち、丼底で温められていた黄身を潰して、ほどよくふやけたかき揚げと共に、残りのそばをワシワシと一気に食べる。これこそが、天玉そばを美味しく食べるためのベストな方法であると私は確信しています。大袈裟な話なのですが・・。 またこれは、立ち喰いそばでしか出来ない究極の技でもあります(街の蕎麦屋では、かき揚げの天玉そばが存在しないため)。
今回は、歯とは何の関係もない話をズルズルとしてしまいました。蕎麦だけに。

歯学博士  沼澤 孝典