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口腔がん

先日、歌手の堀ちえみさんが、舌がんの手術をしたというニュースが大きな話題になりました。口の中にも癌が出来るということを初めて知った方も多いのではないでしょうか。それだけに、私たち歯科医師や歯科衛生士の健康チェックに対する責任は重く、口の中の隅々まで目を光らせているのです。口腔初発のがんは数が少ないと言われていますが、実際に当院では、幸いにも早期発見することが出来て、術後の治癒あるいは経過良好である患者さんも数名おります。
実は、歯科医師である私の父も18年前、舌がんに罹患しました。最初は白板症という良性腫瘍だったので舌の一部を切除するだけで済んだのです。ところが、歯科医のくせに当時喫煙をしていた父は2年後に再発をしてしまい、すぐに生検をした結果、悪性転化していることが判明しました。そして舌の側面1/3切除ならびに術後の放射線治療を開始したのです。放射線治療は口腔粘膜ならびに咽頭部の火傷を起こすので、モノが飲み込めず、麻酔剤のゼリーを流し込んで感覚麻痺させてから食事をするなど、それはそれは・・・見ている周囲の人間もツライ治療でした。それでも転移する前に早期発見、治療が出来たおかげで、現在の父はタバコもやめて、毎日元気に認知症と闘っております(笑)。
口腔がんの原因は、はっきりとわかっていませんが、喫煙、過度の飲酒、不良補綴物、むし歯、などが考えられるとされています。口腔がんに対して過度に不安を抱く必要はありませんが、予防のための健康チェックは有効であると思います。
堀ちえみさんの一日も早い復帰をお祈りしております。

歯学博士  沼澤 孝典